1. 2021年改訂「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」とは
瓦屋根の施工方法が変わり2021年に改訂されたガイドラインは、これまでの施工方法に加えて、より厳密な緊結方法や通気・換気の重要性を強調しています。特に地震や台風への備えとして、瓦の固定方法(緊結)の徹底が求められるようになりました。
また、従来の工法に加え、現代建築にも対応可能な乾式工法の導入が推奨されるようになった点が大きなポイントです。
今回は棟部において詳しく説明したいと思います。
湿式工法とは
① 防水シート(下葺き材)
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屋根の野地板に貼られる防水層。
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「ルーフィング」「アスファルトルーフィング」などが使われる。
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棟部からの雨水侵入を防ぐ最初のバリア。
② モルロック
- モルロックは、「なんばん」シリーズの製品です。
「なんばん」および「シルガード」は、社寺などの伝統建築から一般住宅まで幅広く使用され、瓦屋根に欠かせない漆喰材として高く評価されています。
その中でもモルロックは、従来品に比べてひび割れを大幅に抑える新配合を採用し、これまでにない高い強度を実現した高性能モデルです。 - 従来の工法では、赤土の上に漆喰を塗って仕上げていましたが、モルロックなら一発仕上げが可能です。
そのため、漆喰の剥がれや赤土の露出といったトラブルを防ぎ、メンテナンスにかかる手間やコストも大幅に軽減できます。
③ のし瓦(平瓦)
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階段状に積み上げることで棟に厚みと重厚感を与える。
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モルロックを使って一枚ずつ丁寧に施工。
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のし勾配(外側に傾ける)をつけて水の侵入を防止。
- 左右それぞれの段を緊結線で緊結する。
④棟金具
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屋根の構造体に固定される金属製の支持具。
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棟芯材を支持し、耐風・耐震性を向上させる。
⑤棟芯材
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棟金具の上に取り付けられる木材・タフモック(通常45mm角)。
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棟瓦を1枚ずつビスで確実に固定するための芯(ベース)となる部分です。
⑥ 冠瓦(棟瓦)
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棟の最上部に乗せる、丸瓦・冠瓦。
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美観とともに、棟内部への雨水侵入を防ぐ最終的な瓦。
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棟瓦1枚ごとに棟芯木にパッキン付きステンレスビス止めしてがっちりと固定さする。
乾式工法とは
① 下地確認・準備
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既存の屋根下地(垂木や野地板)を点検
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必要に応じて補修や補強を行う
② 棟金具の取り付け
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棟木の上に棟金具(台座金具)を設置
- 棟補強芯材を施工する。
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この金具は、後で棟瓦をビスで留める際の受け金具
③ 面戸材(めんどざい)の設置
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瓦の水上を切断した場合コーキング・シーラーなどで水返しを作る。
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防水シート・乾式自在面戸で包み込む。
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雨水・ホコリの侵入防止。
④棟瓦の設置
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棟金具の上に棟瓦(冠瓦)をかぶせていく
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棟補強芯材に、パッキン付きステンレスビスで瓦を1枚ずつしっかりと固定します。
⑤ 仕上げ確認
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棟瓦のズレ・浮きをチェック
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面戸材や金具の緩みも最終点検
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この記事の監修者

岡林 司
四國スレート株式会社 代表取締役
業歴55年
昭和44年に創業し、高知県で50年以上、屋根・外壁工事を手掛けてきた四國スレートの3代目を務める。
先代から受け継いだ確かな技術や経験。さらに時代の変化を捉え、常に最新の技術と知識を導入し、お客様の多様なニーズにお応えしながら屋根・外壁工事に勤しんできた。
現在では「すべてはお客様のために」という使命を持ちながら、皆様の住まいに関するお悩みを解決し、より良い外壁・屋根工事をサポートするためのブログを配信している。